Karakami HOTELS&RESORTS株式会社は、和歌山県西牟婁郡白浜町に2つのリゾートホテルを構え、国内外から多くの観光客を迎え入れています。外国人材雇用にも積極的に取り組み、特定技能制度開始以前の2015年から外国人材の受入れを開始。現在では高度人材を含む80名以上の外国人材を受け入れています。今回は外国人材雇用を主導してきた人事部・部長の新宮様と、現場で外国人材の育成にも携わり現在はホテル全体のマネジメントを担うホテル川久・総支配人代理の畑様にお話を伺いました。▼人事部長・新宮さん(左)とホテル川久総支配人代理・畑さん(右) 【Karakami HOTELS&RESORTS株式会社】会社概要:1953年創業。「本当に良いサービスとは何か」を追求し、全国にリゾートホテルを展開するほか、コンサルティング事業や美術館事業などを行う。業種:宿泊業、飲食サービス業本社所在地:北海道札幌市(和歌山県西牟婁郡白浜町に事業所あり)従業員数:709名(2025年7月現在)外国人材雇用実績:技術・人文知識・国際業務 24名(国・地域:インドネシア 7名、韓国 1名、中国 1名、ネパール 12名、バングラデシュ 2名、ベトナム 1名)、特定技能 5名(国・地域:アメリカ 1名、ミャンマー 4名)、技能実習 47名(ミャンマー 47名) ほか9名■雇用前の取組や採用についてQ.外国人材雇用を始めたきっかけを教えてください。宿泊業界の深刻な人手不足の解消と、インバウンド観光客増加による通訳対応の必要性など将来を見据え、2015年より技能実習生の採用を開始しました。その後2016年より技術・人文知識・国際業務、2019年に特定技能といった流れで在留資格を問わず採用を継続し、現在ではインターン生の受入れなども行っています。Q.外国人材雇用を検討する際に、障壁と感じたことがあれば教えてください。受入れ前は、主に2つの点で懸念がありました。1つは、日本人従業員と同じ寮で生活する際の文化・生活習慣の違いに対する不安です。もう1つは、業務上、円滑に意思伝達できるかというコミュニケーションへの懸念および日本人従業員が新しい体制を理解し、協力してくれるかという点です。実際に受入れ直後は、現場の日本人従業員と外国人従業員の間でミスコミュニケーションが発生しました。その際は、人事部担当者を中心として現場に足を運び、日本人従業員に対して、具体的に避けるべき発言や行動例をその背景にある理由と併せて根気強く説明することで、外国人材の受入れに対する「土壌作り」に注力しました。現在では日本人従業員・外国人従業員ともに双方が積極的にコミュニケーションを図っています。特に海外からのお客さまと接する際に多言語能力に長けた外国人従業員に助けてもらうことも多く、互いにリスペクトの気持ちを持ちながら協働できる環境が構築されています。Q.外国人材を採用する際に、特に重視しているポイントはありますか。弊社の主要業務が接客業であることから、採用においては「笑顔」「清潔感」「日本語力」の3つを特に重視しています。日本語力については「日本語能力試験とコミュニケーション能力は必ずしも一致しない」という点を踏まえて選考を行っています。これらの3つのポイントを見極めるためには対面での面接が有効だと感じています。しかしながら、対面面接が難しい応募者にはオンライン面接で合否を決める必要があり、その際に「どこまで実用的な日本語力を要求すべきか」という点で選考基準の選定に悩みました。そのためオンライン面接では、特に"丁寧かつ正確で、相手に安心感を与える会話能力"を構成する要素として「聞く力」と「話す力」を重視し日本語力を評価しています。■内定から入社後の取組についてQ.受入れにあたり、どのような準備やサポートを行っていますか。受入れ前段階では、従業員向けの寮の整備や食堂で提供する食事メニューの見直しを実施しました。特に従業員食堂では、宗教上の理由で食事制限があるムスリムの従業員に配慮し、豚肉・牛肉を利用しないハラル用の食事を提供しています。例えば、ポークカレーやビーフカレーはチキンカレーや野菜カレーに変更し、ポテトサラダのようなメニューでもハムやベーコンを混ぜる前にハラル用を先に取り分けるなど、可能な限りの配慮を行っています。そのほか、辛いものを好む外国人従業員も多いため、個々で辛さを調節できる調味料を食堂に常備しています。受入れ後は、生活面のサポートとして、金融口座の開設や役所・出入国在留管理庁への各種手続きの支援、必要に応じた日用品の買い出し同行などを行っています。就業面では、定期的な1on1ミーティングを実施し、本人の状況確認やモチベーション向上の機会として活用しています。この1on1の担当者は日頃の直属の上司ではなく、人事など本部の従業員が担当することで、威圧感やプレッシャーを与えずに心置きなく話すことができる環境づくりを意識しています。寮の様子従業員食堂の様子Q.受入れ前後でどのような変化がありましたか。会社全体の変化としては、まず従業員の若返り化とダイバーシティ化が進んだことです。採用する外国人従業員は比較的年齢が若いため、結果的に従業員の平均年齢も低くなりました。そのほか特に大きな変化としては、多言語対応が可能な従業員が増えたことで、海外からのお客さまにもスムーズに対応できるようになったことです。また、私たち日本人従業員側の行動や考え方にも変化がありました。外国人材を受け入れたことで、私たち役職者自身も視野が広がり、従業員との接し方や人材の教育方法が大きく変わりました。外国人従業員は何事にも一生懸命で前向きな姿勢で仕事に取り組んでおり、他の従業員にも良い影響を与え、職場全体の活性化につながっています。Q.外国人従業員を育成するうえで工夫していることがあれば教えてください。入社後、数カ月間は日本人従業員と必ず2人1組になり、OJT(実務訓練)に取り組んでもらうようにしています。日本語の講習への参加も積極的に促していますが、何より現場での実践がとても重要だと考えています。ホテルの接客業務は毎回シチュエーションが異なり、マニュアル通りにはいかないことが多くあります。そのため、外国人従業員が笑顔で明るく元気に接客できるように、日本人担当者を配置することで、安心感を持って仕事に取り組んでもらえる環境を作っています。Q.外国人従業員の実際の働きぶりはいかがですか。多くの従業員が海外から目的を持って働きに来ていることもあり、非常に仕事熱心です。勤務態度も真面目であり、業務に必要な日本語を覚えようと努力する姿勢にはいつも感心させられます。その努力の甲斐もあり、今では日本語力も非常に高く、お客さまとのコミュニケーションも言語の壁を全く感じないほどスムーズに接客をしています。また、実際にお客さまからのアンケートでも外国人従業員に対し「笑顔が素敵」「話しやすい」といった声をいただくことも多く、自分から会話に溶け込んでいく姿は日本人従業員にとっても良いお手本となっています。複数の言語能力を持ち、現場で力を発揮してくれる彼らは、まさに弊社にとって"なくてはならない存在"です。■今後の展望についてQ.外国人材にどのような役割を期待していますか。将来的には、現場のリーダーとして活躍してくれる人材が増えることを期待しています。既に、現場の外国人従業員や日本人の派遣・パート従業員を指導するマネジメント要員が増えてきています。入社後まずは、日本語での円滑なコミュニケーション力を習得してもらい、現場での実習や影響範囲の拡大を通して、数年後には複数の従業員をマネジメントできるスキルを身に着けてほしいと考えています。■Karakami HOTELS&RESORTS株式会社で働くエティクさんよりコメント大学卒業後にKarakami HOTELS&RESORTS株式会社に入社をし、2025年1月より和歌山県にあるホテル川久でフロント業務を務めるインドネシア国籍社員・エティクさん。お客さまアンケートで毎月名前が挙がるほどの高い評価を得ている彼女に、入社のきっかけや現在の業務、将来の目標についてお話を伺いました。幼い頃から日本のアニメ文化に触れていたこともあり、日本に対する興味や憧れを抱いていました。大学在学中にKarakami HOTELS&RESORTS株式会社のインターンシッププログラムに参加し、北海道のホテルで半年間働いたのですが、豊かな自然や美味しい食べ物、安全な環境にとても惹かれました。その後、一度母国に帰国をし大学を卒業した後、「この会社で働きたい」という思いから改めて日本に来ました。和歌山県で働き始めたのは2025年1月からですが、母国と似た暖かい気候と、優しい人たちのおかげでとても楽しく生活しています。現在はホテル川久でフロントの仕事をしています。私は人と話すことや、新しい情報を知ることが好きなので、今の仕事はとても自分に合っていると感じています。特に、県外からお越しのお客さまにホテル周辺の観光スポットをお伝えし、喜んでくださった時にとてもやりがいを感じます。今はまだフロント業務で覚えることがたくさんあるので、この仕事を一生懸命頑張りたいです。将来の夢は、自分の好きなクッキー作りやアート、そしてこの会社で磨いた接客スキルを活かして、自分のカフェを開くことです。また、ツアーガイドの仕事にも興味があります。日本が大好きなので、これからも長く和歌山県に住み続け、色々なことに挑戦していきたいです。▷Karakami HOTELS&RESORTS株式会社で働く外国人従業員への密着動画はこちら▷エティクさんへのインタビュー記事をもっと読みたい方はこちら【編集後記】雇用事例記事#05、いかがでしたでしょうか。外国人材雇用に関する情報や支援体制が現在ほど十分ではなかった時代から先駆的に取り組み、現在では全従業員数の約15%を外国人従業員が占めるKarakami HOTELS&RESORTS株式会社。今回のインタビューでは、様々な不安や課題がある中でも試行錯誤を重ね、従業員が気持ちよく働ける環境づくりへ邁進されてきたご担当者様の真摯な想いを感じました。こうした地道な積み重ねこそが、受入れ後の定着と国境や言語の壁を超えて優秀な人材が集まる企業文化を築いているのではないでしょうか。記事内でご紹介した、2人1組のOJT制度や1on1ミーティング、ハラル対応の従業員食堂の見直しなど、貴社でも取り入れられるヒントがあればぜひ積極的にご活用ください。今回インタビューをさせていただきましたKarakami HOTELS&RESORTS株式会社は、国内外の外国人材に「和歌山県で働き、生活する魅力」を伝えるために制作しました"Work in WAKAYAMA" Special Siteの取材・撮影にもご協力いただきました。筆者も実際に現地に足を運び、国籍問わず協働する従業員のみなさんの様子や、業務外でも日本語や業務に関する学びの姿勢を怠らない外国人従業員の方の姿に刺激をもらいました。それと同時に、自分の趣味や友人との休日の外出などを通じて、心から和歌山県での生活を楽しんでいる様子を拝見し大変嬉しく感じました。制作したコンテンツはこちらから日本語・英語・ベトナム語の3言語でご覧いただけます。働く様子のほか寮での暮らしや休日の過ごし方など、よりリアルな様子を垣間見ることができます。ぜひ貴社内や周りの外国人材の方にもご周知いただけますと幸いです。次回、雇用事例記事#06はどちらの企業が登場するか、どうぞ楽しみにお待ち下さい。※本記事の内容は、取材実施時点(2025年7月)での情報となります。取材協力:Karakami HOTELS&RESORTS株式会社参考:"Work in WAKAYAMA" Special Site公開のお知らせ