株式会社スズキモーター和歌山は2016年より外国人材の受入れを開始し、現在8名の外国人材を受け入れています。当初は社長が中心となって外国人材採用を進め、その後は採用担当に引き継ぎ組織的な採用体制を構築するとともに、業務・生活面ともに従業員が一丸となり全面的にサポートしています。今回は、責任者として整備関連の管理業務に従事し、日頃から外国人従業員の生活面のサポートにも積極的に取り組まれている企画推進部兼サービス部 ・部長の楠谷様にお話を伺いました。▼企画推進部サービス部 部長・楠谷さん【株式会社スズキモーター和歌山】会社概要:1966年創業。スズキ株式会社の製造する軽四輪・小型自動車およびセニアカーの販売・整備・中古車・部品・用品の販売の他、自動車保険取扱い等の関連業務などを行っている。業種:サービス業本社所在地:和歌山県和歌山市従業員数:91名(2025年12月1日現在)外国人材雇用実績:技術・人文知識・国際業務 1名(国・地域:ベトナム )、特定技能 3名(国・地域:バングラデシュ 2名、ベトナム 1名) ほか4名■雇用前の取組や採用についてQ.外国人材雇用を始めたきっかけを教えてください。弊社の外国人材雇用は、2016年の偶然の出会いから始まりました。当時、国籍を問わず優秀な人材を求めて大阪府にある自動車整備専門学校を訪問した際に推薦を受けたのが、後に初めての外国人従業員となるベトナム国籍の従業員ズイさんでした。彼は選考時点で国家資格の「2級自動車整備士」を取得予定だったため、すぐに採用を決めました。その後、「外国人従業員第1号であるズイさんが孤立しないように」という社長の判断で、ベトナムから更に2名の外国人材を採用しました。採用時にはズイさんにもベトナムへ同行してもらい、採用活動の通訳やサポート役を担ってもらいました。もともと、国内では自動車整備を学ぶ学生数の激減による人材不足が続いていたため、この出会いを機に外国人材の受入れを本格的に開始しました。現在では、就労系・身分系ビザ(「日本人の配偶者等」「永住者」「永住者の配偶者等」「定住者」という4つの在留資格の総称)を持つ計8名の外国人従業員が会社で活躍しています。Q.外国人材の採用方法や、採用時に重視しているポイントがあれば教えてください。外国人従業員・日本人従業員を問わず一貫して重視しているのは「ポテンシャルと意欲」です。自動車整備士の場合、未経験者の採用も多く、実務を見ないことにはスキルの見極めが難しいため、面接段階では「元気があり、ハキハキと話ができるか」や「本人のやる気」を見ています。実際に業務を行う際には、整備の技術だけでなく社内でのコミュニケーションも重要になるため、仕事に真摯に向き合い、チームメンバーに対し自分の意見をしっかりと伝えることができる人材を高く評価しています。選考の実施方法については採用形態により様々で、ズイさんのように対面で面接を実施する場合もあれば、他府県在住者や人材紹介会社を通じた選考の場合はオンライン面接も実施しています。また必要に応じて実技テストを行い、基礎的な適性を見極めることもあります。Q.外国人材雇用を検討する際に、障壁と感じたことがあれば教えてください。受入れ開始前は、主に社内コミュニケーションや、お客様から受け入れてもらえるかという点で不安を感じていました。しかし受入れ後、これらの懸念は払拭されました。基本的な考え方の違いや言語の壁は多少ありますが、文化や宗教の違いによる障壁は想像していたよりも少なく、彼らは非常に身近な存在だと感じています。日本人従業員とも共通の趣味や話題を通じてプライベートでも交流があり、業務上でも非常に良好な関係性を築いています。また、お客様からも温かい目で見守っていただき、中には外国人従業員に野菜の差し入れをしてくださる地域住民の方もいるほど、地域のコミュニティにも溶け込んでくれています。■内定から入社後の取組についてQ.受入れにあたり、どのような準備やサポートを行っていますか。弊社では外国人従業員が国家資格の取得に向けて力を発揮できるように、私生活も含めたトータルサポートを提供しています。語学面では、日本語能力試験N3レベルに達していない従業員に対し、午前中は業務の一環として日本語学校に通う制度を導入しています。学費は本人負担ですが、通学を就業スケジュールに明確に組み込むことで、学習へのコミットメント・業務と両立できる安心感を提供しています。生活基盤のサポートも重視しており、現在2名の従業員が暮らす一軒家タイプの寮を用意しているほか、寮を利用しない従業員に対しても会社がアパートの仲介や引っ越し支援を積極的に行っています。また、来日直後の金融口座開設やインターネット契約といった生活に必要なインフラ整備については、専門用語が多く外国人従業員だけでは対応が難しい手続きもあるため、社長、総務担当者、同じ部署の同僚など適切な担当者が立ち会いを行っています。さらに、食事会やお花見、キャンプ、スポーツ大会など定期的に日本人従業員との交流機会を設けることで、円滑なコミュニケーションと相互理解の促進に取り組んでいます。Q.受入れ前後でどのような変化がありましたか。外国人材の受入れは、組織全体にポジティブな効果をもたらしてくれました。まず、現場全体の雰囲気がより明るくなりました。勤勉で真面目なうえ、夢や目標を持つ意欲的な外国人従業員が多く、その活気ある存在と業務に対する真摯な姿勢が日本人従業員にも良い刺激となっています。それだけではなく、指導する日本人従業員側の意識にも大きな影響を与えています。異なる考え方や文化に触れることで視野が広がり、これまでの指導方法を見直すきっかけとなりました。外国人従業員のサポートを通じて、私たち指導者自身が新たな学びを得ています。Q.外国人従業員を育成するうえで工夫していることがあれば教えてください。日本語でのコミュニケーションの取り方に注意を払い、彼らが「本当に理解できているか」ということを意識するように心がけています。日本語には独特な意思疎通の難しさがあるため、理解度を確認するプロセスがとても重要になります。例えば、外国人従業員にとって「はい、わかりました」という返事は、日本人が期待する完全な理解とは異なる場合があります。本当はわかっていないことでも形式的に肯定の返事が返ってくることも少なくありません。そのため、弊社では「わかりましたか?」という問いかけに留まらず、「何を、どのように理解したのか」を一つひとつ丁寧に確認するよう努めています。この確認プロセスが、業務指導だけでなく、生活面での様々なシーンにおいても認識のズレによるトラブルの発生を防ぎ、安心して働いてもらうための土台に繋がると考えています。■今後の展望についてQ.今後の外国人材に対する採用計画があれば教えてください。弊社では特定の国籍に限定した採用計画は設けておらず、国籍を問わず優秀な人材の採用を、年間を通して継続的に実施していく方針です。Q.外国人材にどのような役割を期待していますか。まずは整備技術と日本ならではの接客応対の技術を習得し、業務に必要な資格の取得に向けて引き続き努力を重ねてほしいです。特に、故障原因の特定や苦情対応といった高度な日本語を要する接客応対、また、顔が見えない分より正確な日本語力が求められる電話応対などが外国人従業員にとって課題となるケースが多くあります。そのため、整備技術と並行して難易度の高いコミュニケーションスキルを身に着けていってほしいです。また、経験やスキルのある従業員については、国籍に関わらず責任ある役割を担ってもらう考えです。Q.外国人材雇用を検討している企業のみなさまにメッセージをお願いします。弊社も、受入れ開始当初から準備万端であったわけではありません。しかし、試行錯誤を重ね、ここまで取り組むことができました。外国人材は、単なる人手不足を補う存在ではなく、組織に新たな活気と多様な視点をもたらしてくれる貴重な働き手です。初めての外国人材雇用に当たっては不安や心配もあるかと思いますが、会社にとっても得ることが多くあるので、ぜひ前向きに取り組んでほしいです。■株式会社スズキモーター和歌山で働くズイさんよりコメント2016年に外国人従業員第1号として株式会社スズキモーター和歌山に入社をし、自動車整備士を務めるベトナム国籍社員・ズイさんに、入社のきっかけや現在の業務内容、将来の目標についてお話を伺いました。ベトナムで大学を卒業し就職活動を行っていた際に、父から「日本に留学するか、技能実習で行くか選んでみたらどうか」と提案してもらったのが最初のきっかけです。自動車産業が盛んな日本で技術を学びたいと思い、まずは留学という形で来日しました。その後、株式会社スズキモーター和歌山に入社しました。現在はサービス部門の一般整備を担当していて、主に6ヶ月点検や12ヶ月点検などの定期点検を担当することが多いです。他にも、修理に来たお客様の話を聞いて、実際にどこに異常があるのかを調べる修理対応も担当しています。自動車の分解作業や異音のチェック、エアコン修理など、整備する内容は幅広く、難しさもありますが問題の原因がわかると達成感があります。今後の目標はスズキ技能資格制度の「スズキサービス1級」に合格することです。仕事と勉強の両立は大変ですが、資格を取り仕事の幅をもっと広げていきたいです。▷株式会社スズキモーター和歌山で働く外国人従業員への密着動画はこちら▷ズイさんへのインタビュー記事をもっと読みたい方はこちら【編集後記】雇用事例記事#07、いかがでしたでしょうか。一つの偶然の出会いを大切にし、外国人従業員第1号となるズイさんが心細くならないようベトナムまで新たな外国人材の採用に赴き、その後も着実に社内の環境整備に励まれた様子は、まさに企業HPにもある通り「会社の財産は社員」という言葉を体現している取組だと感じました。外国人材を雇用する際に、既に働いている外国人従業員の方と一緒に採用活動を進めていく事例が増加しています。同じ出身国の方であれば会社の魅力を母国語で伝えることができるので、双方にとってもミスマッチが少なくなるメリットがあるため、ぜひご参考にしていただければと思います。今回インタビューをさせていただきました株式会社スズキモーター和歌山は、国内外の外国人材に「和歌山県で働き、生活する魅力」を伝えるために制作しました"Work in WAKAYAMA" Special Siteの取材・撮影にもご協力いただきました。撮影に伴い、外国人従業員のズイさん・オントさんにも詳しくお話を伺いましたが、お二人とも「日本の自動車の技術を学びたい」という想いで来日し、働きながら日本語や資格の勉強に一生懸命取り組む様子がとても印象的でした。日本語レベルが非常に高いことにも驚きましたが、その裏には外国人従業員の学習や生活を支える株式会社スズキモーター和歌山の様々な取組があることがわかり、環境整備や精神的なサポートの大切さを実感しました。制作したコンテンツはこちらから日本語・英語・ベトナム語の3言語でご覧いただけます。働く様子のほか寮での暮らしや休日の過ごし方など、よりリアルな様子を垣間見ることができます。ぜひ貴社内や周りの外国人材の方にもご周知いただけますと幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。ぜひ感想もお待ちしております。※本記事の内容は、取材実施時点(2025年7月)での情報となります。取材協力:株式会社スズキモーター和歌山参考:"Work in WAKAYAMA" Special Site公開のお知らせ