株式会社ヤマサ𦚰口水産は、生マグロ水揚げ日本一を誇る和歌山県那智勝浦町で創業1897年からマグロの仲卸業を営んでいる会社です。2014年から外国人材の受入れを開始し、現在では市場でのセリ・買付から加工業務、販売、事務など様々なポジションで外国人従業員が活躍しています。今回は2025年9月に公開しました外国人材向けのPR動画へのご出演、そして2025年11月14日(金)・15日(土)の2日間にわたって開催したオンライン合同企業説明会にもご登壇いただきました営業部・部長の岡本様にお話を伺いました。▼株式会社ヤマサ𦚰口水産 営業部長兼株式会社𦚰口鮪技術研究所(グループ会社/登録支援機関) 取締役社長・岡本さん【株式会社ヤマサ𦚰口水産】会社概要:1897年創業。生マグロ水揚げ日本一を誇る和歌山県那智勝浦港で、マグロの仲卸、加工、加工品製造、一般消費者向けの直売店運営などマグロに関するあらゆる事業を行う。業種:卸売業、小売業本社所在地:和歌山県東牟婁郡那智勝浦町従業員数:32名(2025年10月現在)外国人材雇用実績:技術・人文知識・国際業務 3名(国・地域:インドネシア 1名、ベトナム 1名、ベナン 1名)、特定技能 3名(国・地域:ベトナム 3名)、技能実習 5名(国・地域:インドネシア 5名)■雇用前の取組や採用についてQ.外国人材雇用を始めたきっかけを教えてください。外国人材雇用を始めた2014年当初は「労働力不足の解消」を目的に外国人材の受入れを開始しました。しかし採用する中で、彼らが持つポテンシャルの高さを再認識し、現在では弊社の未来を担う若くて優秀な人材として、現地送り出し機関やJETROからの紹介、従業員からの紹介などを通じて様々な方法で積極的に採用行っています。Q.外国人材を採用する際に、苦労したことや大変だったことがあれば教えてください。1番苦労したことは「面接」です。特に現地送り出し機関を介したオンライン面接では、面接を1回実施した後すぐに合否の確認をされることもあり、選考過程が短いことに苦労しました。日本語レベルが不十分な候補者に対して日本語で面接を行うと「会社にどんな貢献をしてくれますか?」と尋ねても「頑張りたいです!」と画一的な回答しか得られず、候補者の本質を見抜くことが困難でした。一方で通訳の方を交えて面接を行っても、私自身が完全には発言を理解することが難しいので非常に悩ましいなと感じています。これらを踏まえ、必ず一人につき2回以上の面接を行ったり、会社紹介動画を見たうえで現地語でレポートを提出してもらうなど、言語の壁に隠れてしまいがちな候補者の「思考力」や「本来の人柄」を多角的に見極められるよう、選考プロセスの質を高める工夫を凝らしています。その他にも、国内留学生の採用やリファラル採用など、送り出し機関を介さない形での採用にも力を入れています。一方で、これらの方法で採用を行う場合「求職者にとって魅力的な会社であるか」がシビアに問われるため、評価が役職や給与に反映される明確な構造を作り、それを丁寧に伝えることで会社の魅力を高めることが大切です。■内定から入社後の取組についてQ.受入れにあたり、どのような準備やサポートを行っていますか。グループ会社である登録支援機関の知見や経験を活用し、「特定技能」ビザの従業員に限らず全ての外国人従業員に対し、仕事だけでなく生活、家族、キャリアなどあらゆる相談や悩みに対して伴走しています。具体的には、「特定技能1号」ビザの従業員が「特定技能2号」ビザを取得し家族を呼び寄せるための手続きを全面的に支援したり、「技術・人文知識・国際業務」ビザの従業員が配偶者や子どもを呼び寄せる際の住居・保育園探しなどをフォローしています。相談内容に応じて私だけでなく社内の日本人従業員からも情報収集を行うなど、全社的なサポート体制を構築しています。日常においては、単に社内の人と仕事をするだけでなく、彼らが社外の人とも積極的にコミュニケーションを取り、地域コミュニティに溶け込むことを重視しています。趣味や興味関心に応じて、共に食材を調達し寮で夕食を作る、地域の体育館でバドミントンを楽しむ、地域の方から畑を借りて耕す、ゴルフを一緒に楽しむといった機会を積極的に創出しています。このように彼らの精神的な孤立を防ぎ、日本での生活全体を豊かにすることが、最終的に彼らの仕事でのパフォーマンス向上にも繋がると考えています。Q.受入れ前後でどのような変化がありましたか。受入れ当初は、労働力不足を補うための「若くて比較的コストを抑えて採用できる人材」と捉える意識が少なからずありました。しかし受入れ経験を通して、その見方は大きく変わりました。彼らは日本語のコミュニケーションに課題があるだけであり、論理的思考力や、工夫を凝らしてひたむきに努力する意欲は十分に備わっているとわかり、その後は「会社の未来を担う優秀な人材」として捉えるようになりました。これらの意識のもと、日本人従業員が伝え方を工夫することで彼らも成長し、業務に前向きに取り組んでくれるということがわかりました。現在では通常業務に加え、マネジメントや業務改善といった会社全体の生産性を高める業務に従事する外国人従業員も増えており、実際に幹部として役職に就く人材も出てきています。こうした状況から、会社全体においても日本人従業員の考え方や受入れ体制に変化が生じてきています。外国人従業員が日本人従業員の上司になる可能性が受け入れられ、「一生懸命仕事に取り組む人は国籍に関わらず評価される」という考え方が組織全体に浸透してきています。Q.外国人従業員を育成するうえで工夫していることがあれば教えてください。やはり1番は「正しく伝える」ための工夫です。私たちは周囲の成功事例からも積極的に学びを取り入れながら、彼らが本来持つ能力を最大限に発揮できるよう、伝え方を工夫しています。具体的には、外国人従業員向けマニュアルには写真や母国語を併記したり、作業工程をすべて映像で撮影するなど、視覚に訴えかけるわかりやすい教育ツールを整備しています。さらに重要なのは、日本人従業員側の意識改革です。日本人従業員に対し「正しく伝わらないのは外国人従業員の理解力不足ではなく、伝え手である日本人側の指示が不明瞭であることに起因する」という考え方を浸透させてきました。これにより日本人従業員も伝え方を工夫するようになり、それが外国人材の能力最大化という成果に直結していると感じています。■今後の展望についてQ.今後の外国人材に対する採用計画があれば教えてください。今後も国籍を問わず優秀な人材がいれば、積極的に採用を継続していく方針です。現在、技能実習生として働く従業員全員が、実習期間終了後も引き続き弊社での就労を希望してくれています。彼らが「特定技能1号」ビザへ移行できるようサポートするとともに、従業員からの紹介なども活用し、今後も外国人従業員の比率は増えていくものと見込んでいます。Q.外国人材にどのような役割を期待していますか。外国人材には弊社の中心的な経営の役割を担うことを期待しています。日本式の経営や財務を深く理解したホワイトカラー的な管理職を増やし、将来的には支社長として活躍できる人材を育成したいです。そして単に業務面だけでなく、日本の文化やルールに馴染み地域に根差した生活基盤を確立するという面でも、周囲の外国人材の模範となる存在になってほしいです。共に会社を成長させ、一緒に会社の未来を創っていきたいと考えています。Q.外国人材雇用を検討している企業のみなさまにメッセージをお願いします。外国人材雇用は単に「労働力不足の解消」ではなく「将来の幹部候補を採用する」という長期的な視点で捉えることが大切です。受入れ企業の方には、外国人材の日本での人生を豊かにする伴走者として接していただき、彼らの仕事における能力を最大限に引き出すことで、最終的に企業の持続的な発展に貢献するという考えを持ち取り組んでほしいと思います。■株式会社ヤマサ𦚰口水産で働くヒマワンさんよりコメント2024年に株式会社ヤマサ𦚰口水産に入社をし、事務の仕事を務めるインドネシア国籍社員・ヒマワンさんに、入社のきっかけや現在の業務内容、将来の目標についてお話を伺いました。日本に興味を持ったのは、高校時代に好きになった日本の音楽がきっかけです。その後大学で日本文学を専攻し、「日本で働きたい」と思うようになりました。最初は技能実習生として来日し、一度母国に帰国をしました。その後、家族との将来を見据え、貯金と日本語のスキルアップのためにもう一度日本で働くことを決めました。友人からの紹介で株式会社ヤマサ𦚰口水産を知り、会社について調べたり選考を行う中で「ここで働きたい」という気持ちが強くなり入社しました。入社当初は工場内で商品の在庫確認や請求書確認などの業務を担当していました。入社から1年ほどでお客様や取引先の名前を覚えてきたこともあり、現在は事務所で出荷データや在庫データ管理などの管理業務を担当しています。新しい仕事は難しさを感じることもありますが、上司や同僚が優しく丁寧に教えてくれるので日々スムーズに仕事を進められています。今後の目標はこの場所で長く働き続けることです。 インドネシアから妻と子どもが日本に来てくれたので、子どもが日本の大学を卒業するまで仕事を頑張りたいと思っています。和歌山県は自然豊かで、他の地域と比べても住みやすく働きやすい場所だと感じています。会社はもちろん、保育園の先生や地域の人との交流も増えているので、これからも地域の人とのコミュニケーションも大切にしながら、家族と一緒に日本での生活を豊かにしていきたいです。▷株式会社ヤマサ𦚰口水産で働く外国人従業員への密着動画はこちら▷ヒマワンさんへのインタビュー記事をもっと読みたい方はこちら【編集後記】雇用事例記事#06、いかがでしたでしょうか。今回、岡本様には受入れ前後での「外国人材に対する意識の変化」をリアルにお話いただきました。外国人材を雇用している・検討している企業のみなさまの多くは「労働力不足の解消」が、雇用のきっかけであることが多いのではないでしょうか。一方で、国内外での人材獲得競争が激化するなかで「外国人材に選ばれるための魅力づくり」がとても重要になってきています。この課題に真摯に向き合い、会社のあり方や従業員への向き合い方を試行錯誤されている株式会社ヤマサ𦚰口水産は、きっと今後も多くの優秀な人材を採用していくことでしょう。今回インタビューをさせていただきました株式会社ヤマサ𦚰口水産は、国内外の外国人材に「和歌山県で働き、生活する魅力」を伝えるために制作しました"Work in WAKAYAMA" Special Siteの取材・撮影にもご協力いただきました。筆者が撮影に同行した際にも、市場や直営店、加工場、事務所など様々なポジションで働く外国人従業員にお会いしました。家族を呼び寄せたいという目標を持って働く外国人従業員や、ヒマワンさんのように子育てをしながら働く従業員など、和歌山県を「第二の故郷」と捉え、仕事にも生活にも全力で向き合う姿がとても印象的でした。彼らがこれから日本や和歌山県に働きに来てくださる外国人材のロールモデルとして活躍することを願っています。制作したコンテンツはこちらから日本語・英語・ベトナム語の3言語でご覧いただけます。働く様子のほか寮での暮らしや休日の過ごし方など、よりリアルな様子を垣間見ることができます。ぜひ貴社内や周りの外国人材の方にもご周知いただけますと幸いです。次回、雇用事例記事#07も、どうぞ楽しみにお待ち下さい。※本記事の内容は、取材実施時点(2025年7月)での情報となります。取材協力:株式会社ヤマサ𦚰口水産参考:"Work in WAKAYAMA" Special Site公開のお知らせ 外国人材向けオンライン合同企業説明会2025秋